西ヨーロッパ旅行の巻その10

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＜バルセロナ３＞
17日も引き続きガウディの作品を見に行った。グエル公園である。地下鉄の駅から公園のある丘に上ってい
く。カメラ、レンズ、三脚や水2リットルをリュックサックに詰めこんで背負っているので、足どりが重くなっていく。

グエル公園は丘の斜面の、広い敷地にある。この公園は1900年から1914年にかけて建造されたものである
が、本来は高級な庭園住宅になる予定であった。しかし住宅が予定の60軒のうち３軒しか売れず結局市が
未完のまま買い取ることになり、公園になったという。

グエル公園には裏口のほうから入ったのだが、正面に行くと人であふれていた。正面のあたりにはお菓子の
ような家があり、童話の世界のようである。有名なトカゲの作品の前には観光客が代わる代わる記念写真を
撮っていた。

正面の階段をのぼると86本の柱のあるホールがあり、天井の破砕タイルのデコレーションも目を引き付けら
れる。このホールは市場になる予定で作られたものであった。

公園の道を歩きながらガウディの作品を探すのは隠れんぼに似た楽しい驚きがある。その道の途中には石
を積み重ねた高架橋が見られる。車が通ることを想定して広く造ってある。柱は波をモチーフにしたもので
ある。

ホールの上のほうに広場がある。ここはイベントや会議を行う広場になる予定だった。ギリシア劇場を意識し
て造られた広場の縁には波打つベンチがある。ベンチの表面は破砕タイルのモザイクでデコレーションされ
たものであり、陽の光にあたりキラキラしてきれいだった。

(写真全部はグエル公園、上左端が公園の正面、上中左はトカゲの作品、上右端はホールの柱と天井、
下左端は高架橋、下中左と中右は広場のベンチ）

グエル公園の次はミロ美術館を訪れた。

その前にガイドブックでおすすめの中華料理店に行って、餃子やラーメンなどを食べた。私は麺類が好き
で、麺ならうどん、スパゲティ、ラーメン何でも好きである。ここの中華料理店のメニューは中国語でも書い
てあったので、中国語で注文した。帰るとき、ここの女主人が中国語であいさつしてくれたので、私が中国
人だと思ったのだろうか。そう言えば私にとても愛想よく応対してくれた。

私が宿泊しているホテルの近くにある洋食屋さんにステーキ定食を食べに２回行ったが、ここの店のひとも
中国人だった。こういう時、中国語で「おいしい」などと言ってあげると喜んでくれた。

ミロ美術館はバルセロナ市街の南西部にあるモンジュイックの丘の山腹にある。地下鉄からフニクラ（ケーブ
ルカー）に乗り換えてすぐである。

この美術館には2回ほど訪れたことがある。ミロの作品は理屈なしに自分の感性に身をゆだね子供のような
気持ちになって鑑賞するのがいいと思っている。しかし気に入った絵は何点かあったものの、以前ほどは感
動しなかった。ミロの絵を楽しむには遊び心がなければならない、長旅の疲れでそんなゆとりがなくなったの
か、と思ってしまった。

翌日もモンジュイックの丘のほうへ行った。

モンジュイックの丘の麓にあるカタルーニャ美術館を訪れた。美術館は噴水のある階段を上っていく。階段
の上のほうからはスペイン広場、そして遠くにはサグラダ・ファミリア聖堂も見渡すことができる。

（左端はミロ美術館、中左の奥に見えるのはスペイン広場、中右と右端はカタルーニャ美術館）

カタルーニャ美術館の展示物は余り期待していなかったが、なかなか良かった。西ヨーロッパの中世の頃の
絵画、すなわちルネサンス以前の絵画にはロマネスク絵画とゴシック絵画に分かれていることを知った。

ロマネスク絵画は12世紀ごろの絵画で、ほとんどが宗教画である。特にカタルーニャ地方のピレネー山脈に
ある教会の壁に描かれた絵が多かった。展示室はもともとの教会のアーチや柱などを再現し、そこに絵を貼
りなおしていた。シンプルで色彩がつよく、平面的で輪郭線が太く、原始的な宗教画であった。ルネサンス以
降の絵を見慣れていた私にはかえって強い衝撃を感じた。彫刻も同様に印象的であった。

ゴシック絵画は14世紀ごろのもので、写実的で立体的になり、顔にも表情がでるようになっていた。しかし、
解剖学の知識や明暗法、遠近法をいかしたルネサンスの絵画に比べて、中途半端に感じた。

カタルーニャ美術館にはエル・グレコも展示され、そしてピカソなどの現代美術まで網羅され、全部見るのに
2時間以上かかってしまった。

（写真全部はカタルーニャ美術館で展示されていたロマネスク様式のの絵画と彫刻）

食事のあと、バスに乗ってモンジュイックの丘の頂上にあるモンジュイック城へ行った。城といっても軍事要
塞といった感じで、大砲がいくつか置かれていた。この日は晴天で城から見るバルセロナ市街や地中海の
眺めが素晴らしかった。

（写真左端はモンジュイック城、中と右端はモンジュイック城からの眺め）

19日の午前がバルセロナでの最後の観光となった。

バルセロナで一番有名な通りはランブラス通りである。地下鉄から上って見ると、前に行ったときの記憶と違
ってそんなに広くない通りだったので、場所を間違ったかと思った。しかしやはりそれはランブラス通りであっ
た。街路樹が茂り、涼しげな通りだった。まだ朝10時前だったので人通りは少なかったが、通りに面した有名
なサン・ジュセップ市場は買い物客が集まっていた。

ランブラス通りのすぐ近くにはレイアール広場がある。中央に噴水があり、いくつか立っているガス灯はガウ
ディの若いころの作品である。広場の周囲にはレストランのテーブル、椅子が置かれている。まだ早い時間
であったが、呼び込みをしている。

あるヨーロッパの観光客が「すいません。さっき食べたばかりで、お腹がいっぱいなのです。」と丁寧に返事
していた。本当にヨーロッパの人はマナーがよく、中国からやってくると、天と地の差ほどある。道のゆずりあ
いもしょっちゅうあるし、お礼の言葉もよく受ける。もっともマナーが良いから性格が良いとは限らないが、旅
行している分には気持ちのいいものである。しかし、その後パリやロンドンを旅行するにつれ、自分のマナー
がいいかどうか気になり、ストレスさえ感じるようになった。

さて、ランブラス通りが尽きてすぐのところにコロンブスの塔がある。高さ60mの塔である。コロンブスの像の左
手にはアメリカみやげのパイプが握られている。

コロンブスの塔を過ぎるとウォーターフロントである。ヨットハーバーもあるが、おしゃれなショッピングセンタ
ーもあった。このあたりはもはや私の記憶にはない新しいバルセロナであった。

（写真左端はランブラス通り、中左はサン・ジュセップ市場にある果物屋、中右はレイアール広場、右端は
コロンブスの塔）

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