チベット高原旅行の巻その５

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＜一瞬の夏の風景＞

同仁で一泊して翌日の8月1日、チベット高原を東南の方へ向かった。同仁から夏河へはバスで３時間ほどで
到着し、夏河で一泊してさらに郎木寺へはバスで４時間ほどかかった。

夏河も郎木寺もチベット高原の南端のあたりにありどちらも青海省にあると思っていたが、実は甘粛省（か
んしゅくしょう）にあった。この旅行で初めに訪れた蘭州は甘粛省の省都であり、夏河は蘭州からバスで４
時間ぐらいのところにあった。こういうことなら蘭州から直接夏河に向かえばよかったのだが、チベットの
入境許可証の入手が遅れるということで急きょ旅行先に加えたのであった。

しかし夏河と郎木寺に行くことができてよかったと思った。同仁の近くで見た黄河の風景も素晴らしかった
が、山のあたりは緑が少なかった。同仁から夏河、さらに郎木寺に行く途中の風景（写真下全部）はなだら
かな山の全体が緑となっており、あちこちに黄色い花が咲き乱れていた。川とはいえない小さな水の流れも
ところどころに見られた。これらの水は黄河に注いでゆくのだろうかと思った。また牛や山羊なども放牧さ
れ、草を食（は）んだり水を飲んだりしている風景ものどかで平和に感じた。

このあたりは寒さ厳しく夏が短いところで、目の前に広がっている風景は『一瞬の夏の風景』に過ぎなかっ
たけれど、私にとっては『永遠の風景』として鮮やかに脳裏にやきついた。

＜夏河（かが）＞

夏河にあるチベット仏教寺院はラプラン寺（写真下全部）で、1709年に創建された。創建がさらに400年以上
も古い同仁の隆務寺に比べると規模が大きくないし、殿堂のつくりも簡素に見えた。

殿堂の内部はグループごとに見学することになっており、担当のチベット僧が熱心に解説してくれたが、話
が専門的すぎてあまり理解できなかった。内部にある仏像などは印象に残るものもあったが、他のチベット
仏教寺院同様内部は撮影厳禁となっており、写真で紹介することができないのは残念である。

ラプラン寺から200ｍほど南側に貢唐宝塔（こうとうほうとう～写真下左端）がある。ラプラン寺の著名な学者
だったコンタンツァン３世が1805年に創建した仏閣である。創建当時のものはこれまた文化大革命のときに破
壊され、現存のものは1993年に再建されたものである。

宝塔の最上部にある相輪の下のところは塔瓶とよばれ、そこには菩薩のレリーフ（写真下中）が八体あり、ま
ぶしく輝いていた。塔瓶の内部には高さ２ｍの阿弥陀仏がおさめられている。

この塔瓶のあるところから、向かいにあるラプラン寺（写真下右端）をのぞむことができる。手前にあるのが
僧坊で、チベット僧が起居しているところである。

同仁の街もそうであったが、夏河の街でもチベット僧が連れだって生活用品などを買いものしている姿が見ら
れた。生活するためには必要なものを買うのは当たり前なのだが、現実にそういう姿を見せられると、寺院に
勤めているサラリーマンのように見え少々興ざめした。

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